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『500万年ララバイ』

 ディズニーランドで1日中、閉園時間ギリギリまで遊んだ後、JR舞浜駅から京葉線に乗り込みます。すると会社帰りのサラリーマンと、週刊誌の吊り広告が目に飛び込んできます。
 「現実に戻ってきた・・・」。夢の世界を存分に味わった代償であるかのように、それまで頭の中に漂っていた甘い匂いの霧は急速に消えて、明日の1限の授業のこと、先週バイトで失敗したことなんかが思い出されてきます。
 ディズニーランドに大して興味のない人には「何のこっちゃ」と思う話かもしれませんが、旅行や映画などのレジャーに置き換えてみれば、この感覚は、大多数の人が経験したことのあるものになるかと思います。
 この瞬間、ディズニーランドのケースで言うなら、背中に『星に願いを』を聴きながらトボトボと舞浜駅の改札に向かって歩いていくこの瞬間こそ、実は僕が芝居で挑みたい瞬間なのではないか、と思うことがあります。“夢の世界”を提供することではなく、それがスウッと遠ざかっていく瞬間にこそ、僕は芝居を作る根拠を感じることがあるのです。
 つまり、どうにかして現実の生活や人生に、寄り添った作品を作りたいと願っているのです。
 そのための方法は、はっきり言ってよくわかりません。ずっとわからないままなのかもしれません。ただ、とにかく一生懸命に、本当にひたすら一生懸命に作るしかないということだけは確かであると思います。

 今回の『500万年ララバイ』はtheatre project BRIDGEにとって5回目の公演になります。
 旗揚げから毎回、パンフレットにこの「観終わってから読んでください」という終演後のあいさつのようなものを書き続けてきました。しかし、僕の発言権は、基本的には作品内でのみ許されていると思っています。
 この場で作品の解説をしたり、稽古の苦労話や劇団内の内情を語っても、それは『500万年ララバイ』とみなさんの生活や人生とが近づくことにはなりません。
 1曲目の音楽・一言目の台詞から最後の暗転まで、『500万年ララバイ』は結局その中にしか存在しないのです。いえ、theatre project BRIDGEそのものが、そのたかだか2時間の中にしか存在しないのです。
 しかし、そのわずかな、ほんの一瞬に過ぎない時間が、わずかでもみなさんの中に居場所を設けられたらいいなと、思っています。

 それでは、また逢いましょう。

| 2003,08,29,Fri 2:34 | theatre project BRIDGE | comments (x) | trackback (x) |

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