見た目は「森ガール」
なのに音はロックンロール

 徳島出身のスリーピースバンド、チャットモンチー。メンバーの橋本絵莉子(ボーカル/ギター)、福岡晃子(ベース)、高橋久美子(ドラム)の3人は、バンドよりも下北沢のカフェとかが似合いそうな女の子。華奢で大人しそうで、およそロックには結びつきそうにないこの3人が、なんでこうもタイトで重い音を出しちゃうのか。デビューしてすでに5年経つけれど、僕は未だに彼女たちの見た目と音とのギャップが新鮮だ。かっこいい。すでに全国的な知名度を得ているチャットモンチーだが、もっともっと評価されていいと僕は思う。

『生命力』は2007年にリリースされた2枚目のアルバム。まずこのジャケットが素敵。きっぱりとしたブルーと陰影だけで描かれた3人の顔のイラストが、可愛いけれど迎合していない彼女たち自身の姿勢をよく表している。

 このアルバムを聴いていて毎回感じるのは、冒頭4曲のすさまじいキラーチューンぶり。<親知らず><Make Up! Make Up!>とたたみかけ、<シャングリラ>で意表を突き、濃厚なミドルチューン<世界が終わる夜に>へとなだれ込むという展開に、4曲だけで早くもカタルシスを感じてしまう。他のアルバムを聴いても思うのだが、チャットモンチーはアルバム序盤の組み立て方が上手い。

 彼女たちは『生命力』の後、1年ほどして3枚目のアルバム『告白』をリリースしている。現時点での最新のオリジナルアルバムはこの『告白』。彼女たちの現在の人気を決定付けたアルバムであり、メディアの評価も高かった作品なのだが、僕は2枚目の『生命力』の方が好きだ。先日theatre project BRIDGEのカメラマン、巽くん(彼もロック好きなのだ)ともこの件について意見が一致したところである。2人とも理由は同じで、『告白』というアルバムはちょっと“可愛すぎる”のだ。好きな男性に振り向いて欲しくて云々という世界観は、男としてはなかなかもう一歩踏み込みづらいのである。

 それに対して『生命力』は、同様に恋をモチーフにした歌が大半を占めているものの、テーマは恋を通り越して「自立」「孤独」といった普遍的なものへ手を伸ばしている。「希望なんてない」「愛という名のお守りは結局空っぽだったんだ」なんていう、けっこう痛々しいフレーズも散見される。『告白』のような垢抜けた感じはないのだが、その分粗い砂粒を噛んだような苦さがあり、僕はそこに惹かれるのだ。

 だがとにかく何を置いても彼女たちの最大の魅力は冒頭述べたパワフルなサウンド。スリーピースでありながら音はぶ厚くて重い。ギターとベースとドラム以外の楽器に(ほぼ)手を出さない姿勢もかっこいい。彼女たちの現在の人気を担保にした歌モノとしてのキャッチーさだが、本来のチャットモンチーは「音で味わう」バンドだと思う。この『生命力』がリリースされた1ヵ月後に上演したtheatre project BRIDGEの『クワイエットライフ』では、早速<Make Up! Make Up!>を開場BGMとして流した。


ROCK IN JAPAN FES.2008より
<シャングリラ>

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